図書館運営協議会

図書館運営協議会 第一期答申

「市民サービスの向上を図るための図書館のあり方について」答申(2008.7.31)
国分寺市図書館運営協議会
目次
  はじめに
1. 公共図書館の役割とこれからの図書館像
2. 国分寺市立図書館の現状と課題
  2-1. これまでの国分寺市の図書館整備
  2-2. 国分寺市立図書館の課題
3. 図書館サービスへの提言
  3-1. 当面のサービス充実策
  3-2. 中長期的な課題・展望
  3-3. 運営体制等
4. 結びにかえて
附1. 委員名簿
附2. 審議経過


はじめに
国分寺市は、これまでさまざまな努力を払いながら、全国的にも比較的高い水準の図書館サービスを実現してきた。現在財政的に厳しい状況ではあるが、生涯学習社会の到来がいわれ、地域において市民が生き生きと生活してゆくために、市立図書館は、一層市民本位で、きめ細かいサービスを実現し、市民生活を支援してゆくことが求められている。
国分寺市図書館運営協議会は、平成18年8月18日、教育委員会より「市民サービスの向上を図るための図書館のあり方について」の諮問を受けた。以来、答申に向け、2年間にわたり、11回の定例運営協議会、7回の小委員会を開催し、本市図書館の現状と課題を明らかにし、ここに市民サービス向上のための提言をまとめた。 教育委員会におかれては、この答申を基礎に、本市図書館サービスの充実に一層ご尽力いただくことをお願いいたしたい。


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1. 公共図書館の役割とこれからの図書館像
(1)市民生活、地域づくりに必要とされる図書館へ
昭和40年代、「市民のための図書館」づくりが多摩地域ではじまった。この新しい公共図書館は、「何でも、いつでも、どこでも、誰にでも」を合い言葉に、市民の求める資料を積極的に貸出すこと、子どもたちへのサービスを重視すること、市内全域へのサービスを展開する図書館をめざした。こうした努力の結果、「買い物籠をさげて図書館へ」といわれるように、学生の勉強部屋から、普通の市民が暮らしの中で利用する図書館へと大きくその姿を変えていった。
それから約40年、地域社会と自治体は、少子高齢化問題や地域の安全安心問題、格差社会や教育問題、情報通信技術(ICT)の発展、人々の意識と行動様式の変貌、自治体財政の深刻化と行政需要の増大など、さまざまな問題や課題に直面している。
現代の公共図書館もこうした問題に無関心ではいられない。むしろ、市民や地域、自治体の課題に向き合い、「市民の生活、地域づくりに必要とされる図書館」、「社会の変化に対応し進化する図書館」である必要がある。 『ユネスコ公共図書館宣言』(1994年)は、こうした現代の公共図書館の役割と意義について次のように述べている。
「社会と個人の自由、繁栄及び発展は人間にとっての基本的な価値である。このことは、十分に情報を得ている市民が、その民主的権利を行使し、社会において積極的な役割を果たす能力によって、はじめて達成される。建設的に参加して民主主義を発展させることは、十分な教育が受けられ、知識、思想、文化および情報に自由かつ無制限に接しうることにかかっている。地域において知識を得る窓口である公共図書館は、個人および社会集団の生涯学習、独自の意志決定および文化的発展のための基本的条件を提供する。」
 文部科学省の「これからの図書館の在り方検討協力者会議」の報告書『これからの図書館像~地域を支える情報拠点をめざして~』(平成18年3月)も、図書館が「住民の読書を推進し、基礎学力や知的水準を図るために欠かせない重要な知的基盤であり、ひいては地域の文化や経済社会の発展を支える施設」であり、「地域の行政や住民の自立的な判断を支える情報提供施設」であると述べている。
(2)現代公共図書館の役割と機能
現代の公共図書館は、より具体的には、地域社会や住民に対し、次のような役割や機能をはたすことのできる機関である。
[1] 公共図書館は「知識、思想、文化および情報に自由かつ無制限に接しうること」を保障し、人々が民主的権利を行使し、社会に積極的に参加し、生涯にわたり学習を続けるための基本的で不可欠の教育文化機関である。
[2] 公共図書館は、子どもたちの活字離れ、読書離れがいわれる中で、子どもたちの間に読書の楽しみと読書の習慣を広め、想像力や創造力を育み、優れた文化の継承と多様な文化、多様な生き方への理解を促進している。
[3] 公共図書館は、高齢者、障がいをもつ人々、在住外国人など、図書館利用にさまざまな困難をもつ人々に図書館利用を保障し、情報格差や社会的不平等の解消を促進することができる。
[4] 公共図書館は、多様な資料と情報を収集し、提供することで、現代社会のさまざまな問題解決のためのアイディアを生みだし、解決のために活動する人々を支援することができる。また仕事や生活で疑問に思ったこと、調べたいことを解決してくれる情報の泉である。
[5] 公共図書館は、自治体の政策立案活動や、議員の調査活動に必要な資料や情報を提供し、地方自治を支えている。同時に地域活動や市民活動に関する情報の受信と発信の場を提供し、市民活動の交流を促し、地域づくりに貢献している。
[6] 公共図書館は、地域の中の「ひろば」として、誰もが好きな時に自由に出かけ、そこでゆったりと読書の時間や鑑賞の時間を楽しむことのできる、地域の中の居場所の役割を果たしている。
地域に公共図書館があることで、私たちの仕事や生活、地域社会は、より豊かに発展してゆく。そしてこうした公共図書館を市民とともに作っていくことは、行政と図書館に課せられた責務である。


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2.国分寺市立図書館の現状と課題
2-1. これまでの国分寺市の図書館整備
(1)施設整備
国分寺市では、昭和47年の社会教育委員会議により「国分寺市図書館基本計画」が審議され、昭和49年の「国分寺市基本構想」に基づき、中学校区に1館の地域独立館方式により整備を進めてきた。これにより、2.3平方キロに1館の図書館が配置され、比較的充実した施設配置になっている。またこれら5館は、ほぼ同規模で整備され、利用館による格差のないサービスを市民に提供できるよう努力してきた。このことは高く評価すべきところである。 また、本多図書館駅前分館は行政資料の専門図書館として設けられ、今後の国分寺市立図書館のサービスにとってきわめて重要な位置づけをもつものである。
(2)子どもたちへのサービス
子どもたちへのサービスでは、子どもの本のリスト作成、学級への団体貸出や読み聞かせの出前、市民グループも協力したおはなし会の開催、児童の図書館見学、中学生の図書館職場体験の受け入れなどが積極的に実施されている。また保護者や市民に向けて、児童文学講座や講演会なども市民グループと共催で行っており、高く評価すべきである。
(3)障がい者サービス
本市では図書館開設間もない昭和51年に障がい者サービスを開始し、平成7年までに、市内の3つの館にそれぞれ録音室、対面朗読室を設け、障がいを持つ人々が、より身近な場所でサービスを受けることを可能にしてきた。
(4)貸出サービス
地域図書館整備の効果もあり、平成16年には貸出冊数が100万冊を超えた。平成19年度現在、市民1人当たり貸出冊数が8.89冊で、多摩26市のなかでは上位グループに属しており一定の成果を上げている。これは資料費の確保や的確な選書、資料相談、また開館時間拡大の努力の結果と考えられる。
(5)職員
本市図書館の職員数は現在25名で、うち司書有資格者は15名、その割合は60%となっている。図書館開設以来上記のような高い図書館サービスを可能にしてきたのも、こうした専門職員の配置に負うところが大きいと考えられる。


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2-2. 国分寺市立図書館の課題
(1)地域づくりへの貢献
図書館が地域づくりに果たす役割は大きい。例えば子育てや高齢化の問題、いじめなどの教育問題、障がいを持つ人からの問題提起等々、住民が向き合わざるをえない課題は多い。図書館が公民館をはじめ学校、児童館、学童保育所や障がい者施設等と連携して、これらの課題に取り組んでいくならば、より高い市民意識が育まれ、地域づくりに貢献できる。
(2)子どもたちへのサービス
子どもの読書活動を豊かにする上で、おはなし会は最も有効な方法のひとつである。本市図書館でもすでに実施されているが、お話し室などの施設環境が十分整っていない。明るい雰囲気でおはなしの世界に浸れる場が望ましい。またヤング世代がくつろげ、本について語り合える場が確保され、彼らの要望にそった本が用意されれば、読書離れをくい止め、中学生や高校生等の若い世代の図書館利用が期待できる。
(3)高齢者へのサービス
今後増加が予想される高齢者の生きがいや居場所づくり、健康問題に資する情報の提供など、図書館の高齢者問題への対応は大きい課題であり、積極的に取り組むことが必要である。
(4)障がい者サービス
今日、情報提供媒体がカセットテープからCDを利用したDAISY(※1)に変わりつつある。情報技術の進歩を取り入れ、障がいを持つ人にとってより便利な仕組みへの取り組みが課題である。また、資料配送方法、点訳パソコンの導入と操作支援、音訳者の養成なども課題である。
(5)情報サービス(レファレンスサービス)
図書館が利用者の調査活動を支援し、積極的に情報提供を試みることが求められている。学校教育現場や行政組織へのレファレンスサービスや情報提供、インターネットを活用した各種サービス、ホームページの充実など、多くの課題がある。
(6)開館日、開館時間
開館日の拡大、開館時間の延長など図書館利用の利便性をさらに向上させなければならない。
(7)資料費
つい先ごろまでの情報提供はもっぱら紙媒体(図書)により行われてきたが、今日では、それらに加えて電子的媒体による情報提供が本格化してきている。現状ではこうした対応が設備の点でも提供すべきデータベース情報の点でも充分とは言えない。また図書資料の充実も引き続き重要である。近年の図書費の推移を見ると平成10年度の市民一人当たり資料費が534.8円だったのに対してその後毎年減少し、平成19年度は320.9円と著しく減少している。出版点数は依然として増加傾向にあり、幅広い蔵書を活用してさまざまな課題を解決し、豊かな未来を築く図書館活動のためにデータベースを含んだ資料費の予算化は大きな課題である。
 また、市内に在住する外国人のための多文化・多言語資料も少なく、改善が必要である。
(8)市の歴史・文化・風土に関する文献資料の完備
本市は歴史に誇る国分寺の名を冠した唯一の自治体である。国分寺に関する資料充実により、全国からの求めに応じ、また発信可能な図書館であることを望みたい。そのためにも、現存する貴重な資料は可能な限り速やかに収集・整理・保存するとともに、資料展示により、観光者が立ち寄れる展示場を置くことも必要である。
(9)中央図書館の必要性
今日では、多様かつ専門的な課題解決を求める図書館利用が増えてきており、それらに応えることのできる多種多様な専門的資料と、専用のレファレンスカウンターを持つ図書館が求められる。しかし国分寺市には十分には整っておらず、利用者の中に不足感が生じている。
また、図書館は新しい情報を提供するだけでなく、今までに積み重ねられてきた知識を体系的に蓄積保存提供しなければならない。そのためには充分な保存書庫が必要だが、本市図書館の書庫はきわめて狭く改善が必要である。
さらに、図書館や市民団体が主催する集会や読み聞かせ講習会などのための講座室、図書館利用のきっかけにもなるさまざまな展示スペースも不足している。
地域館の連絡・調整・支援や全体の運営を今後一層充実させる必要もある。
上記のような課題を解決するには、地域図書館とは別に相当の規模と機能を有する中央図書館が必要となる。多摩地域26市の中央図書館の床面積の平均は3,000平方メートルを超えており、7,000平方メートルを超える中央図書館を持つところも出てきている。
(10)空白地域の解消
5館構想によって地域館が設置されたが、地域の変化の中で図書館利用が困難な地域がうまれている。このような地域に早急に図書館建設の具体的対策を立てるべきである。


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3. 図書館サービスへの提言
3-1. 当面のサービス充実策
(1)社会の変化に対応した新たなサービスの展開
今日地方行政は、少子高齢化、子育て、地域づくりなどさまざまな課題に直面しており、図書館も行政の一組織として新たな課題に立ち向かう必要がある。
[1] 行政・議会への情報提供サービス
自治体が抱える課題を住民と共に解決していくために、当該自治体の行政資料の収集と提供を引き続き展開するとともに、課題解決に参考となるさまざまな資料情報を収集し、市民、自治体職員 議員などに積極的に提供することが強く望まれる。本多図書館駅前分館はこのようなサービス拠点として重要であるが、今後はオープナーとも連携した業務展開が望ましい。
[2] 高齢者に対するサービス
高齢者人口が増大するなか、この世代の居場所や生きがい、健康問題に資する情報の提供などが図書館に望まれている。孤独になりがちなこの世代に交流の機会を提供するなど図書館が提供できるサービスは多い。
[3] 多文化・多言語サービス
平成20年3月1日現在、国分寺市の外国人登録者数は1,655人で、市内総人口比1.4%であるが、今後増加が見込まれる。このような人々に向けて、さまざまな資料や情報を提供することは、先にも述べたユネスコ公共図書館宣言(1994年)にあるように、今後一層求められるサービスである。
[4] 開館日、開館時間の改善
開館時間の拡大は他の多摩地域の図書館でも取り組まれており、午後7時ないし8時の閉館時間となっているところが多い。当市でも本多図書館が平日午後8時まで開いており、改善が図られた。今後も引き続き開館時間や開館日の改善に取り組むことが必要である。
[5] インターネットによる情報提供
現在市立図書館でもインターネットによる各種案内や資料検索が行われている。今後さらに機能を充実し、より積極的に情報発信を行うことが望ましい。また資料のデジタル化も進んでいるが、デジタル化された資料についてはインターネットからの直接利用も検討すべきであろう。
また図書館からの情報発信については、下記のような項目を充実することが必要である。
 a) 図書館活動の情報公開
 b) ブックリストの紹介
 c) 書評の表示や外部の書評ページへのリンク
 d) 市民による書評・感想などの募集と表示
 e) メールを利用した積極的な情報発信
[6] 市民活動への支援
図書館は、子どもの読書活動推進に貢献している市内の文庫活動グループに対し、おはなし会や語り手育成、講演会開催等を通して支援している。このような支援の一層の充実は市民の意欲を高め、活動を通した交流や実践を盛んにし、子育てや地域の活性化に役立つものである。
また一般の利用者にとっても、講演会・読書会等が開催されれば、市民が集い、交流し、地域はいっそう豊かになる。例えば、様々な分野で活躍している人の思いが講演会や読書会を通して伝わり、それらに共感することで、意欲が生まれ、活動の指標が見出せる。それが図書館利用の活性化に繋がる。
図書館は今後市民に積極的に働きかけ、市民活動を支援することが望まれる。
(2)資料の充実と資料費の確保
[1] 一般資料、行政資料 地域資料の充実
平成19年の新刊出版点数は76,978点である。国分寺市立図書館の平成19年度購入冊数は22,325冊(複本含む)で新刊出版点数との差は大きい。一方国分寺市立図書館の市民一人あたり資料費はおよそ320円で、多摩地域にあって26市中18番目である。今後電子的情報の提供も視野に入れれば、資料費への格段の配慮が必要で、少なくも市民一人あたり500円を当面の目標とすべきである。
また、地域資料の充実、とりわけ自治体行政資料は、本市はもちろん、多摩地区各市、東京都のものは必要不可欠である。さらに市内各団体サークルなどが作成する資料の収集保存提供は市民活動支援、活動の活性化、地域づくりの観点からも必要であり、収集した資料の積極的な展示も求められる。
[2] 雑誌の充実
雑誌に対する市民の要求は高い。また問題解決のための最新の情報や動向を把握するために、雑誌は欠かせない。ことに適切な行政施策の選択にあたっては、図書では間に合わないことが多い。平成20年度の購入タイトル数308であるが、関心領域の多様化個別化専門化にも対応することが必要から、これを600から700タイトル程度まで増やすことが望まれる。
[3] 青空文庫、電子ブック、ケータイ小説などへの対応
近年電子的に提供されている「図書」「雑誌」が増加している。インターネット上だけでしか配信されない情報も多く、これらへの適切な案内は必要である。図書館ホームページがこれら情報へのポータル(※2)として機能するよう支援が求められる。
[4] 有料データベースの提供
市民や勤労者に真に役立つ図書館であるためには、紙による情報提供とともに、新聞オンラインデータベースを始めとする有料のデータベース提供が重要である。苦労して時間をかけなければ得られない情報がこのデータベース利用によって簡単に短時間で引き出せるなどその効率効果はきわめて大きい。市民がこれらを自由に使いこなせるようその支援を含めての提供が求められる。これらは費用負担の面から、他の自治体図書館や機関とのコンソーシアムも考えられる。
(3)子どもの読書環境の充実
[1] 「子ども読書活動推進計画」の実現
平成20年度に策定が予定されている「子ども読書活動推進計画」を着実に実現し、それを確実なものにするために評価及び進行を点検する体制を確立する必要がある。
[2] 読書環境の整備
おはなしの部屋には子どもが集中して聴くことのできる設備と、夢を育む明るい雰囲気作りが必要とされる。また、子ども達が周囲に気兼ねなくくつろげる居場所や、さらに成長する中・高生が読書について語り合える場をつくることも重要である。
[3] 読書活動の推進支援
地域では、保護者・文庫関係者などが、図書館、児童館、学童保育所、学校などでおはなし会などを活発に実践するようになった。その活動がスムーズに行われ、さらに広がるためにも、図書館の積極的な対応が必要である。また他部署との横断的な連携による取り組みも必要である。
[4] 学校教育への支援
生活の大半を学校で過ごす児童・生徒にとって、学校図書館は子ども達の育成に重要な働きを持つ。学校図書館運営にあたり、司書の育成、蔵書構築などについて相談に応じ、助言することのできる機関は公立図書館である。そのことによって学校図書館運営がよりスムーズに進められる。
 学校図書館に対する市立図書館からの支援としては下記のような支援がある。さらに、各関係機関(学校指導課等)との密接な連絡強化も望まれる。
 a) 授業の進度、調べ学習・行事にそった図書資料の提供
 b) 学校図書館からのレファレンス対応
 c) 学校図書館担当者の研修、交流・連絡への支援
 d) 学校と市立図書館の連絡体制の充実
 e) 学校での語り・読み聞かせ等の出前をする市民グループへの支援や相談
 f) 学校への図書資料の搬送
[5] メディアリテラシーの教育
子どもたちがインターネットに触れる機会が多い今日、メディアリテラシー教育も子どもたちにとって緊急の課題である。図書館でもインターネット利用についての指導が求められる。
(4)図書館利用困難な人々へのサービス
[1] 障がいを持つ人のための資料の充実
障がいを持つ人やその介護にあたる人のための資料を充実する。必要とされる資料は「障害者福祉」や「医学」以外の分野にもわたる。それゆえ障がいを持つ人や介護にあたる人のニーズを十分把握して資料の充実を図る必要がある。またそれらの資料にアクセスしやすくする工夫も必要である。また、従来から行ってきたサービスの一層の充実を図るとともに、DAISYなどのデジタル資料や点訳パソコンなどの整備や操作支援が必要である。
[2] インターネットを利用した情報収集
書籍など有形の資料の他、現在ではインターネット上に様々な情報が存在する。インターット上の情報にアクセスするためのポータルを図書館ホームページに構築することにより、図書館利用困難な人へのサービスを充実することができる。
[3] 来館困難者への資料提供
来館困難者特に自宅療養者、高齢者施設入所者、病院入院者たちへの貸出サービスとして、ボランテイアによる配送回収なども課題である。また図書館の利用が困難な人、障がいを持つ人も図書館へ来ることが容易となるような仕組みを検討すべきである。
(5)施設設備の改善 -北口再開発ビル内に整備される予定の図書館-
北口再開発ビル内に整備される予定の図書館においては、以下のような機能・施設が望まれる。
[1] 本節で挙げた新しい様々なサービスの実現特に、駅前にあることを生かし、各種データベースの提供やインターネット利用の拡充などによる、ビジネス情報の提供、夜間開館など開館時間の拡大
[2] 行政情報・地域情報提供サービス機能の拡充
[3] 次節で述べる中央図書館の機能・施設の一部の実現
[4] 上記が実現できるような相当規模の施設面積


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3-2. 中長期的な課題・展望
(1)サービスの質的向上と中央図書館の必要性
国分寺市立図書館の5館は、独立性の強い地域館として活動し、地域に根付き、多くの市民に親しまれ、高く評価されている。しかし、他市の図書館に比べハード面や機能の点で充足されてない部分があると感じている利用者が出てきている。基礎資料は整ってきているが、より高度な内容を求める利用者が増えており、それには十分応えきれていない。各館に特色を持たせる点について、また、専門分野を充実させる等、急速に変化してゆく時代に即した要求に応える方策が求められる。この課題に答えるためには一定規模のキャパシティを持つ中央図書館の設立が必要とされる。下表に期待される中央図書館の概要を示す。
[1] 設備
最低5000平米以上の施設面積
30万冊規模の開架図書、90万冊規模の閉架収蔵庫
独立した子どもフロア
充実したレファレンス室
市民のための様々な部屋、設備
・資料閲覧室、グループ学習室、研究個室
・おはなしの部屋兼幼児用自由室
・会議室、集会室、談話室
・ボランティア室
・インターネットやPCを利用する際の専用デスク
交流、読書のできるオープンスペース
駐車スペース
市立図書館全体の管理運営を行う事務、作業スペース
[2] 主要機能
市民の様々な要求に応える十分な資料の提供
・地域図書館でカバーできない専門書など広範囲の資料の提供
・団体貸出などへの対応
・国分寺関係資料など個別分野の資料の提供
市民の様々な要求に答えるためのレファレンス機能
・地域図書館でカバーしきれない規模のレファレンス資料
・地域図書館のレファレンス機能の支援
・レファレンスのための専門職員の配置
資料の保存とその効率的な運用・管理
・市立図書館全体の資料保存
・情報技術による効率的運用
市民の様々な活動の支援
・子ども文庫、読み聞かせ、おはなし会などの活動支援
・ボランティアの養成、活動支援
他部局との連携・支援
・学校図書館との連携・支援
・他部局、類縁機関との連携
・他の図書館(公共図書館・大学図書館など)との連携
市立図書館全体の管理運営
・図書館全体の一般管理
・地域図書館との連絡・調整
・資料の地域図書館その他への搬送
・選書および資料管理
なお中央図書館の設立にあたっては現在の地域図書館を縮小するのではなく、現在地域図書館が果たしている役割を更に充実したものとする必要がある
(2)地域図書館の充実と西国分寺地区地域図書館の必要性
地域図書館はなによりも住民の身近にあり、高齢者や子ども(幼児からヤングアダルトまで)、乳幼児を連れた親などが気楽に足を向け、本と親しめる場所でなければならない。地域図書館にスペースを確保することによって、来館者がゆっくりとすごせるスペースやレファレンスコーナーを充実することが必要である。
また、図書館の配置に偏りができており、西国分寺駅南側地区(西元町、泉町、内藤)が図書館空白地区となっている。この地区は
[1] 恋ヶ窪図書館、もとまち図書館にも遠く、子どもの足では20分以上かかる。
[2] 最近になって開発が進み多数の高層住宅が建てられ人口は急増している。
地域図書館はなによりも市民の身近にあることが必要である。図書館空白を解消するためにこの地区に地域図書館を設置する必要がある。
(3)恋ヶ窪図書館の改築の必要性と留意点
恋ヶ窪図書館・公民館はすでに老朽化し建替えの必要があるが、図書館・公民館は長い利用の歴史があり、現在の利用者に不利益を強いるような場所への移転は不要な摩擦を生じる恐れがある。移転にあたっては現在位置から遠く離れない場所を選ぶべきである。

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3-3. 運営体制等
次にこれらの諸提言を実現するための運営体制について触れておきたい。
(1)専門職員の配置と専門性の向上
図書館サービスの向上はハードの面とともに、図書館職員の専門性に大きく依存する。
とりわけ団塊の世代の退職期を迎え、これまで蓄積してきた図書館経営・サービスの専門性を継承するとともに、新たな図書館サービスの展開に必要な高度な専門性が必要とされている。それゆえ、専門職員の配置と専門的能力向上への努力が、今後一層求められる。それは少ない人員で運営の効率性を高めるためにも必要である。
なお、障がい者の雇用促進の観点を踏まえながら、日野市や町田市において実施されているように、障がいを持つ職員の図書館への配置も、今後の課題として検討すべきである。
(2)他の図書館や専門機関、類縁機関、行政部局との連携・協力
市財政の厳しい現状を踏まえる時、図書館費の大幅な増額は望めないところである。それゆえさまざまな工夫を重ねることにより、効率的で効果的な図書館運営の実現に向けた努力が求められる。例えば、都立図書館や多摩地域の公共図書館との広域利用、協力レファレンス、有料データベース利用、分担収集・保存などの協力関係(コンソーシアム)を構築することや、近隣の大学図書館、市内の専門機関(教育センター、障害者センター、男女平等推進センター(ライツこくぶんじ)、民俗資料室など)、市の行政部局(子育て支援、福祉、保健、学校教育など)との連携協力をとおして、専門資料の提供や専門情報、行政情報に関する高い質のサービスを実現することも可能である。
またこれら専門機関には資料室・図書コーナーなどがあり、親機関である学校や専門機関の活動に貢献している。これらの図書館、資料室等はそれ自体としての充実発展が求められると同時に、豊富な資料と高い専門的機能を持つ市立図書館からの支援も必要である。
なお、近年やや後退傾向を見せている、都立図書館による市町村立図書館への支援サービス(協力貸出、協力レファレンス、協力車の運行など)について、今後の充実を望みたい。
(3)指定管理者制度について
近年いくつかの自治体で、財政状況の厳しさを背景に、公の施設の管理を民間の営利企業等に委ねる指定管理者制度が導入されている。しかし、日本図書館協会の「公立図書館の指定管理者制度について」(2005年8月4日)にも指摘されているように、知る権利や読書の自由の保障は公共性が高く、民間団体に委ねるべきではないこと、無料原則の図書館は民間営利企業への委託になじまないこと、短い指定期間では事業の継続性、安定性などに問題があること、コスト削減のため短期雇用、低賃金の職員が多用されるため専門性の蓄積が阻害されることなど、少なくない問題点がある。それゆえその導入は十分慎重であるべきである。
(4)市民との協働、市民参加の推進
市民との協働(ボランティア含む)や市民参加をすすめ、図書館と市民の質の高い関係性を構築することも必要である。例えば、市民を含む実行委員会方式による各種企画、中高生や子ども文庫関係者との協働によるブックリストの作成などが考えられる。また「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成13年7月)や,本年改正された図書館法にも指摘されているように、図書館運営協議会などの協力も得て、図書館運営に関する自己評価とその結果を公表することは、市民への説明責任を果たすとともに、図書館サービス改善の課題を市民とともに共有する上からも必要である。
また利用者懇談会への参加者をふやし積極的に市民の意見を汲み上げるために、開催日時を市民の参加しやすい日時とするとともに、テーマを決める等の工夫を行う。また中・高生が参加できる機会を設ける。
(5)図書館情報システムの更新進
図書館の運営には情報技術による支援がかかせない。現在国分寺市立図書館で運用されている図書館情報システムは標準的なもので、現状では十分機能しているが、すでにやや古いものであり最新のものではない。図書館サービスの拡大拡充を実現するには新しい技術を取り込む必要がある。
[1] 資料管理へのICタグの導入
現在バーコードにより管理されている資料をICタグによる管理に更新することによって、資料管理が大幅に高機能化される。日常の資料管理が高能率化できるだけでなく、閉架収蔵庫の高効率な運用には必須であり、資料の盗難防止にも効果がある。
ICタグは技術的にはRFID(※3)と呼ばれる無線素子を利用したものである。RFIDの利用にあたってはそのセキュリティに留意することが必要である。国による利用基準が設けられているのでこれに準拠すべきである。
[2] 検索機能の強化
利用者にとって図書館情報システムの最も重要な機能は検索機能である。現在の資料検索はタイトル・著者名などの書誌情報による検索しか行っていない。これでは書誌情報を知っている者しか検索ができない。内容に踏み込んだ検索や、検索した資料の内容の紹介などが行えるよう検討すべきである。また、分野別のブックリストの表示など通常の資料データベース検索以外の機能も追加することが望ましい。
(6)館内インターネット端末の運用上の留意点
すでに市内各図書館にはインターネット端末が導入されインターネット上の情報検索などに利用されている。図書館内からのインターネット利用は今後増大すると思われるが、館内に設置するインターネット端末については運用・管理上留意しなければならない点がある。
[1] 悪用されないこと
公共図書館設置のインターネット端末のように不特定多数が利用する端末は「悪用」されやすいので十分に注意し対策をたてるべきである。ここで「悪用」とは「図書館に設置されたインターネット端末」の目的をはずれた利用も含む。
[2] 「踏み台」とされないこと
インターネットで悪意ある操作を行う場合自分の位置を知られないために他のコンピュータを経由して行う場合が殆どであるが、この場合に経由されるコンピュータを「踏み台」最近では「ボット」と呼んでいる。「踏み台」とされることは悪意ある行為に加担することであり、「踏み台」を減らすことは悪意ある行為を減らすことにもなる。「踏み台」とされないよう十分注意すべきである。
[3] インターネット利用上の指導
インターネットの利用は低年齢化してきており、その利用には弊害もおびただしいものがある。子どもに向けては特に利用上の留意点について指導をしていく必要がある。


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4. 結びにかえて-新たな図書館計画の策定の必要性
これまで提言してきた本市図書館サービスの改善向上や、運営体制の課題の実現を考えた時、本市の生涯教育・図書館行政の役割と責務には大きいものがある。本市の図書館計画は、昭和49年に策定されたものであるが、すでに30年以上が経過し、地域状況も大きく変化し、図書館に対する市民の期待も大きくなっている。こうした変化に対応した新たな図書館計画の策定が望まれるところである。


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附1. 委員名簿
氏名 住所 略歴等 備考
梅山 伸二   市民公募委員 7条4項(1)  
岡田 謙   市民公募委員 7条4項(1)  
佐々木 雅子   市民公募委員 7条4項(1)  
須藤 初枝   市民公募委員 7条4項(1)  
松田 節子   市民公募委員 7条4項(1)  
藤沢 和男   前日野市立中央図書館長 7条4項(2)  
丸本 操   東京経済大学図書館副館長 7条4項(2)  
山口 源冶郎   東京学芸大学教授 7条4項(2)  
坂田 長生   国分寺障害者団体連絡協議会 7条4項(2)  
深川 佐知子   国分寺市立小・中学校PTA連合会 7条4項(2)  
* 国分寺市図書館条例


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附2. 審議経過
第1回定例運営協議会
(平成18年8月18日)
教育委員会諮問
「市民サービスの向上を図るための図書館のあり方について」
第2回定例運営協議会
(平成18年11月16日)
図書館運営協議会の運営方法について
第3回定例運営協議会
(平成19年2月15日)
国分寺市立図書館の現状と課題について(1)
第4回定例運営協議会
(平成19年5月31日)
国分寺市立図書館の現状と課題について(2)、本多図書館視察
第5回定例運営協議会
(平成19年7月19日)
国分寺市立図書館の現状と課題について(3)、恋ヶ窪図書館視察
第6回定例運営協議会
(平成19年10月4日)
「これからの図書館像」、「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」について、光図書館視察
第7回定例運営協議会
(平成19年12月20日)
委員からの提言(梅山委員、藤沢委員、須藤委員)、答申案作成のための小委員会の設置と委員の選出、もとまち図書館視察
第1回小委員会
(平成20年1月30日)
課題整理、答申骨子原案等の検討
第8回定例運営協議会
(平成20年2月21日)
答申の骨子等検討、並木図書館視察、府中市立中央図書館視察
第2回小委員会
(平成20年3月13日)
答申原案検討
第3回小委員会
(平成20年4月10日)
答申原案検討
第9回定例運営協議会
(平成20年4月17日)
答申案の審議
第4回小委員会
(平成20年5月8日)
答申原案修正検討
第5回小委員会
(平成20年5月23日)
答申原案修正検討
第10回定例運営協議会
(平成20年6月12日)
答申案の審議
第6回小委員会
(平成20年6月30日)
答申原案修正検討
第7回小委員会
(平成20年7月17日)
答申原案修正検討
第11回定例運営協議会
(平成20年7月31日)
答申文の審議、決定、答申
(※1)Digital Accessible Information SYstemの略。視覚障がい者や普通の印刷物を読むことが困難な人々のためのディジタル録音図書の国際標準規格として、国際的なデイジーコンソーシアムにより開発と維持が行なわれている情報システム。
(※2)インターネット上のサイトにアクセスする際の入口となるウェブサイト。多数のサイトの情報の集約や検索機能などにより効率よくインターネット上の情報を得ることができる。
(※3)Radio Frequency IDentificationの略、対象に取り付けた小さなICと無線により情報をやりとりすることにより認証・同定などを行うもの。