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図書館運営協議会

図書館運営協議会 第三期答申概要版

「IT技術の進展をふまえた国分寺市立図書館のサービスのあり方について」答申
答申の概要

1. 総論-ICT技術の進展と図書館サービス
(1)公共図書館の基本的な機能と役割
公共図書館は,地域住民の身近にあって,人々の知る権利と学びの権利を保障し,子どもたちの読書の喜びを支え,地域住民の居場所や安らぎの空間です。その基本的な機能と役割には以下のことがあります。
[1]社会参加や生涯学習の保障、[2]子どもたちの読書の保障、[3]高齢者や障がい者の情報格差や社会的不平等の解消、[4]人々の仕事や生活に必要な情報の提供、[5]地方自治や市民活動の支援、[6]地域づくりへの貢献、[7]地域のひろば、居場所となる。
(2)図書館におけるICT化の動向
図書館では近年急速にコンピュータの利用が広がっています。インターネット情報の提供,検索や予約,図書館資料の保存や管理の電子化(デジタル化)などが進められ,電子書籍の提供を試みる図書館も現れています。
(3)情報格差(デジタルデバイド)の問題
他方,急激なICT化はさまざまな情報格差(デジタルデバイド)を生み出しています。インターネットの利用は年齢や所得によって大きな格差が見られます。そうした中で公共図書館には情報格差(デジタルデバイド)を解消する役割が期待されています。
(4)電子書籍と本を読むことの意義
電子書籍が華々しい話題となる中で,電子書籍が普及すれば図書館には紙の本は必要ではなくなるという議論があります。しかし紙の本は読書にとって最適な媒体であり,人間の思考力や想像力に深く関わっている媒体です。したがって図書館は,今後,紙の本と電子書籍の両方を提供するハイブリッド型になってゆくと考えられます。

2. 国分寺市立図書館におけるICT化の現状
(1)図書館電算システムの導入
国分寺市立図書館では,積極的に図書館電算システムの導入を行い,所蔵目録,利用者登録情報,貸出返却業務の電算化,インターネット情報の提供などを行いました。また図書館ホームページを立ち上げ,インターネット,携帯電話からアクセス可能なシステムとなっています。
(2)インターネットパソコンとオンライン・データベース
2007年度からインターネットパソコンを各館に1台ずつ導入し,図書館利用者がインターネット情報にアクセスできるようになりました。また駅前分館では,オンライン・データベースを提供しています。
(3)現在の図書館電算システム
現在,予約システムのレベルアップを図り,図書館ホームページおよび館内利用者用端末機から各図書館の書架上の資料も予約ができるようになりました。またホームページの充実を図っています。
(4)障がい者サービスのICT化
これまで障がい者サービスとしてカセットテープの「声の図書」の自館作成や貸出を行ってきましたが,新たに2009年度より,デジタル録音図書「DAISY(デイジー)」の購入を始め,現在172タイトルを所蔵しています。
(5)次期図書館電算システムの課題
次期図書館システムではICタグを活用した図書館サービスを導入する予定です。そのため2009年度から順次ICタグの貼付を進めています。

3. ICT技術の導入と図書館サービスの可能性
(1)利用者サービスの向上
インターネットの活用によって,次のような利用者サービスの向上が可能になります。横断検索などの検索機能の向上,多様な情報源へのアクセスなど情報サービスの高度化が可能になります。また利用者が自宅のパソコンや携帯端末などから図書館を利用できるという,非来館型サービスが広がります。しかし利用者と図書館員の関係の希薄化をもたらす恐れがあり,利用者に対する資料相談体制の充実が同時に必要です。

また近年発売されたタブレット型端末機は,文字の拡大操作が容易で,携帯性も高いため,視覚障がい者や高齢者の読書に利便性をもたらします。視覚障がい者のためのデジタル録音資料(DAISY資料)の収集と提供を進める必要があります。

ICT技術を活用した広報活動・発信活動として,ホームページ,電子掲示板,メールマガジンの発行,TwitterやFacebook などの活用などが考えられます。
(2)図書館資料のデジタル化,資料管理
図書館が所蔵する貴重書,歴史的史料,地域資料をデジタル化し公開することで,広く利用に供することが可能になります。
またICタグの装備によって,蔵書点検の効率化や期間の短縮,ブック・ディテクション・システム(BDS)など,資料管理にも威力を発揮します。

4. 電子書籍と図書館サービス
(1)国内における電子書籍の動向
電子書籍については,過去数回「電子書籍元年」と称され話題になったことがありましたが,これらはいずれも電子書籍の大幅な普及につながることはありませんでした。しかし近年注目すべき動きが起こり,今後普及のペースが早まる可能性も出てきました。他方で,コンテンツもコミックが大半で,読むための端末やフォーマットなどインフラの整備がなされていないなど,多くの課題が残されています。
(2)公立図書館での導入事例
現時点では公立図書館で電子書籍を導入してサービスを提供している事例はまだ一部ですが出ています。しかし最も重要なコンテンツについては,その多くは約1000点前後にとどまり,ごく限られた出版社の書籍か,著作権フリーの書籍が大部分で,数の面でも内容の面でも利用者にとって魅力的とはとてもいえない現状です。
(3)現状の課題
本年に入って楽天や凸版印刷が電子書籍端末の発売を発表するなど,電子書籍市場は活況を呈してきたように見えますが,今後順調に発展していくかどうかについては予測がつきません。図書館として対応できるレベルを超えた問題もあり,出版界の動静等も含めた国内での電子書籍市場の進展状況を注視することが必要です。そしてその方向性を見定めたうえで,図書館としてどのようなサービス展開が可能かを中長期的に検討する必要があります。

5. ICT化の課題
(1)図書館のICT化とは
図書館のICT化(電子化)にはふたつの側面があります。ひとつは運用面の電子化です。目録の電子化,処理の電子化,インターネット環境の活用などです。
もうひとつはコンテンツの電子化です。電子書籍,オンライン・データベースの提供,デジタル・アーカイブなど様々な形態が考えられます。
(2)対応(課題)
電子書籍については今後の進展の状況を注視すべき段階であり,喫緊に導入を検討する必要はないと考えられます。したがってまず,コンテンツの電子化をいかに進めていくかという課題があります。図書館や市で所蔵している独自資料,地域資料についてデジタル画像化しアーカイブとして提供することは大いに意義があります。

その他オンライン・データベースの提供を進めることが考えられます。これらを利用するためにはインターネット環境などのインフラを整備する必要もあります。その際セキュリティの問題は重要です。子どもたちのインターネット利用に関しては,利用者の権利に十分配慮しつつ,有害サイト等に対する対応を検討する必要があります。

また,適切な人材の育成と維持は最大の課題であるといえます。現在では司書的素養だけでなくICTについての知識も必須となっています。

6. 提言
(1)図書館のICT化とは
市民サービスの更なる向上を図るために,ICT化への対応における今後に向けての施策を以下のとおり提言します。
[1]ICタグの貼付の全館対応とICタグを活用したサービスの実現
[2]図書館内におけるインターネット環境の充実
[3]ホームページによる情報発信の充実
[4]地域資料等のデジタル・アーカイブ化とその活用
[5]障がい者サービスの向上
[6]電子書籍への中長期的対応の検討
なお,ICT化のための予算の確保ならびに, ICT技術を十分に活用できる図書館スタッフの更なる育成・維持強化が不可欠です。